『サピエンス全史』『ホモ・デウス』『21Lessons』など世界的なベストセラーを生み出し続けるイスラエルの天才歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリさんの新刊『緊急提言 パンデミック』が10月8日に発売されました。
人類がコロナウイルスとどう立ち向かうべきかといった命題に対して歴史学者ならではの見地からハラリ氏の考えや願いが書き綴られています。
本書はコロナ禍やコロナ後の世界のあり方について人類の最適解となりうるのか。
ハラリ著『緊急提言 パンデミック』ってどんな本?
そもそもユヴァル・ノア・ハラリって誰??
そもそもユヴァル・ノア・ハラリとは一体何者なのか。
簡単にプロフィールをご紹介いたします。
イスラエルにあるヘブライ大学の教授で、現代の”知の巨人”と称される歴史学者・哲学者です。
著書『サピエンス全史』は世界で1600万部を超えるベストセラーとなり、ハラリ自身も一躍時の人となりました。
21歳のときにゲイであることをカミングアウトし、現在は夫のヤハフとともにイスラエルで生活しています。
この本は書き下ろしではない?
この本のサブタイトル「寄稿とインタビュー」という言葉が示す通り、収録されている文章はこの本のために書き下ろされたものではありません。
コロナによるパンデミックが世界を襲った2020年の春に英米の有力紙に掲載された記事とNHKにて放送されたインタビューをオリジナル編集としてまとめたものになります。
各紙に寄稿されたタイミングとこの本が出版されたタイミングが半年近くずれてしまっており、現在の状況が反映されていない点が少し残念。
しかしこの本に全く価値がないのかというとそうではありません。
コロナという世界的危機を通じて人類がどのようにパンデミックと向き合っていくべきかという普遍的な問いを投げかけてくれています。
ハラリさんオススメ!コロナ禍の世界を生き抜く3つの要素
協力と情報共有
パンデミックへの対策は脱グローバル化による情報の遮断ではなく、むしろ国際的な協力と情報共有こそが必要であるとハラリ氏は言います。
もし人間どうしの接触を断つことによってパンデミックを防ごうとするのなら石器時代にまで遡らなくてはならないが、それは現実的ではありません。
ウイルスに対してとった行動のなかで何が最も効果的であったか、あるいはその過程で犯したミスでさえも積極的に他国に情報共有することで、世界が同じミスを繰り返さないように各国が努めるべきである。

成功・失敗に関わらず自身の行動によりどのような結果が伴ったのかを共有することはビジネスにおいてもすごく大切なことですよね。
もちろん社内で積極的に情報共有することは”超”がつくくらい当たり前のことだと思います。
ですがそれを直接利害関係が及ぶ相手にまで実践できているでしょうか。
ハラリ氏が提言しているのは他国(すなわちビジネスに置き換えると他社)への情報共有ということです。
それが多くの人のためになることだと頭の中では理解できていてもなかなか実践するのは難しいですよねσ(^_^;)
利害関係や立場を取っ払って真の意味で協力していくべきだという理想的な世界のあり方を示してくれています。
集団的リーダーシップの必要性
ハラリ氏はまた、グローバルなリーダーシップが欠如している点もこの危機に伴う大きな問題の一つだと考えています。
2008年の経済危機や2014年のエボラ出血熱が流行したときにはアメリカがグローバルリーダーとなり、様々な国が結集することで最悪の事態を防いできました。
ところがアメリカはここ数年間”アメリカ・ファースト”を掲げ、自国の利害だけを考えてきました。
その結果、世界中のいたるところでグローバルな敵意や不和が募っていると分析しています。

この章ではトランプ政権を痛烈に批判していますね(笑)
先ほどの話にもつながってきますが、国際協力を進めていくためには多くの国を結束させうるリーダーシップが必要だということを述べています。
それがアメリカ以外の国であってももちろん良いし、市民や企業が声を上げることで政府を動かしていく今日的な民主主義の形であっても構わないのです。
恐れを克服する方法
コロナへの恐れを克服するために二つのことをしているとハラリ氏は言います。
一つは毎日二時間ヴィパッサナー瞑想を行うことで精神を浄化させるという方法。
毎日時間をかけることが心の健康のためにとても大切なことだと述べています。
そして二つ目が科学を信頼すること。
陰謀論や非科学的な意見に屈して不合理な行動を取るべきではなく、科学的で合理的な目で状況を眺めるように常に努めるべきである。

中世の平均寿命と現代の平均寿命を比較し、死後の救いを約束した宗教と、平均寿命を40歳以上も伸ばすことに成功した科学とを対比している箇所が個人的に興味深く感じました。
この著者はデータに基づいて物事を客観的に分析するのがとても上手ですね。
なるほどと思わず唸ってしまうところもたくさんあるので、気になっている方はぜひ一読ください\(^-^)/
コメント